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zoom RSS 狩人は都を駆ける/我孫子武丸

  作成日時 : 2008/11/09 14:27   >>

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我孫子武丸の『狩人は都を駆ける』(文藝春秋、1333円)という短編集があります。
舞台は京都。。。


【あらすじ】

動物嫌いの私立探偵「私」のもとに、同じビルで動物病院を経営している沢田からペット関連の調査依頼が持ち込まれる。
「私」は「猫探しならやらんぞ」というポリシーをいちおうは持っているものの、何しろ〈個人事務所を開業してはや六ヶ月〉、〈わずかばかりの貯えも底をつきそうで、アパートの家賃も、二ヶ月滞納している。このままだとアパートを引き払ってこの事務所に寝泊りするしかないかもしれない〉状態。結局は引き受けてしまうのである。

表題作「狩人は都を駆ける」は、原稿用紙200枚ちょっとの中編。
あとは、原稿用紙70枚から80枚くらいの短編小説集。

「狩人は都を駆ける」……左京区下鴨に住む藤井喜美子という気難しい老女の飼うドーベルマン・雷蔵が誘拐され、身代金1000万円が要求された。「私」が犯人との交渉役を依頼された事件。。。

「野良猫嫌い」……先斗町のクラブで働く、みひろという女の子の住んでいる左京区のマンションの周辺で、猫の連続惨殺事件が起こっていた。その謎に「私」が挑む。。。

「狙われたヴィスコンティ」……ドッグショーで入賞候補のシーズーのヴィスコンティに「出場をとりやめろ」という脅迫状が送られてきた。そのヴィスコンティのボディガードを「私」が依頼された事件。。。

「失踪」……「私」の事務所と同じビルの地下一階にある「ノワール」というスナックのバーテンの野口くんが持ってきた事件。彼の恋人が飼っていた猫が失踪した。近所では、「猫さらい」ではないか、という噂が流れている。。。

「黒い毛皮の女」……雨の夜、狭い一方通行路で「私」は小さな黒猫を轢いてしまった。沢田の病院で救急の処置をしてもらって、飼い主探しを始める「私」。。。



【感想】

トーン自体は、ライトなハードボイルドという感じ。
今回は本格ではありませんが、「野良猫嫌い」、「失踪」、「黒い毛皮の女」には、少し本格っぽい香りもします。
まさか犬の事件の時にはハードボイルドで、猫の事件の時には本格っぽさを少し出してる、わけではないと思うのですけども。どうなんでしょう? そういう書き分けをしてるんでしょうか?

ハートウォーミングな結末ではありません。むしろ、どことなく後味の悪さの残る、人間のダークな部分を描こうとしています。
猫さらいや少年犯罪、ペットをめぐる人間の虚栄心など、現代人の抱える心の闇をさまざまな事件を通して(えぐるという感じではなく)、さらりと描いています。
えぐるのではなくさらりと、というのは、この作品がハードボイルドという形式を採っているからでしょう。結局は、探偵は外部に立って、「我関せず」の態度を貫いています。
しかし、探偵の「私」は、その割には結構頑張って調査に奔走するところに好感が持てます。
そして、何より作者も「私」も、作中に登場するペットの飼い主たちとは違う位置に立っていながら、より本質的な愛情に根ざしたまなざしで動物たちを見つめていることが伝わってくるところが、読んでいて安心できるところではないでしょうか。

ネット上の書評ではそんなに評価は高くないのですが、個人的には好きです。
「動物に優しくなければ生きていく資格が、ない」
というチャンドラーを援用(?)した帯文もいいなと思います。
京都在住の人や動物好きの人に。。。


本局の方に書いた文章のそのまま移植ですが、諸事情でほぼそのままアップしました。

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狩人は都を駆ける 我孫子武丸
京都で探偵事務所を営む「私」のもとに久々にやってきた仕事の依頼は、なんと誘拐事件の解決。 もっとも誘拐されたのは家で飼われていたドー... ...続きを見る
粋な提案
2010/08/05 13:18

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