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zoom RSS インシテミル/米澤穂信

<<   作成日時 : 2008/11/10 03:48   >>

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昨年の本格ミステリ・ベスト10では第4位の作品で、米澤穂信の『インシテミル』(文藝春秋、1600円)という作品があります。


【あらすじ】

バイト情報誌に時給11万2000円の「モニター募集」が掲載される。
主人公の結城理久彦とヒロインの須和名祥子ほか十人が、そのモニターに選ばれて、山中にある〈暗鬼館〉に集結した。

〈暗鬼館〉は〈館〉とついているが、すべて地下にあり、17の部屋が円周上に並んでいるという奇妙な形をした〈建物〉。

その〈暗鬼館〉に一週間泊まり込んで〈観察〉される、というのがバイト内容である。

時給は24時間つくので、計1881万6000円の収入となる予定。

しかし、この〈暗鬼館〉、一度、入ると自分で出口を見つけるか、生存者が二人にならない限りは、期間が満了するまで出られない。

また、ここではボーナスもある。
1.人を一人殺すと報酬総額が2倍となる。
2.殺された者は報酬総額が1.2倍となる。
3.正しい犯人を指摘した者は報酬総額が3倍になる。
4.犯人指摘の助手となった者は報酬総額が1.5倍となる。

そういった条件下で、見知らぬ十二人の男女は地下の〈暗鬼館〉に閉じ込められ、ゲームがスタートするのだ。

もちろん、一週間過ごすだけで1800万円の報酬がもらえるのだから、誰も何もしなければこんなに素晴らしい儲け話はない。

しかし、十二人もの人がいると、誰がどんな気を起こすかはさだかではない。

実際、参加メンバーが一人、また一人と死体になって転がってゆく。

さて、どうする?

殺すか、殺されるか、犯人を指摘するか、出口を捜すか……

また、〈暗鬼館〉にはもう一つルールがあって、夜の間は各自の部屋に戻らないといけない。

しかも、その部屋には鍵がかからないのだ。

夜の間は、〈ガード〉と呼ばれる白い円筒形のロボットが館内を巡回していて、〈ガード〉に累積で四回警告されると殺害されてしまう、というルールもある。

各部屋には〈おもちゃ箱〉が置いてあって、その中にそれぞれ一つずつ〈武器〉が用意されている。
その〈武器〉は護身用に使ってもよし、殺人用に使ってもよし。
〈武器〉は部屋によって違い、誰がどの〈武器〉を持っているかが、容易にはわからない。

そんな状況での七日間なのである……


【感想】

設定はあまりにもリアリティにかけるけれども、その分、擬似体験(=読書の面白さのひとつ)としては、結構、楽しいのではないでしょうか。

読んでいて、〈暗鬼館〉という奇妙な〈館〉は、ちょっと見学くらいは行ってみたいような気がするほどでした。

もちろん、見学中に館内放送が始まってしまうのだけは、カンベンしてほしいところですが。


ゲーム感覚も今の若い人には受け入れやすいかもしれません。



ミステリをたくさん読んでいる人には、あの名作の「あれ」がここでこんな風に使われているのか、という楽しみ方もできるようにはなっています(もちろん、それはわからなくても謎解きには全然影響しません)。



が、何より、個人的に楽しかったのは、次々と参加者が殺されて追い詰められたような気持ちになれる緊張感と、

地下の〈館〉に閉じ込められて出ることができないという閉塞感で、

とくに〈館〉に窓が無い(地下なので、当然ではあるのですけれども)という設定が、より効果を増大させているように思います。


例えば過去の名作ミステリにあるように、みんなでラウンジに集まり、なるべく集団行動をすればいいのでは?
という意見も出てきます。

しかし、そこは登場人物が現代の若者(?)、残されたメンバーに派閥が生まれ、仲間割れもするのです。

そうたやすく他人を信用しません。





タイトル「インシテミル」の、

〈淫する〉=〜にふける。没頭する。

という意味ですが、



殺人ゲームに〈淫してみる〉

本格ミステリに〈淫してみる〉

と、どんな風にも理解することも可能ですし、

〈暗鬼館〉に〈inしてみる〉

かもしれません。

その〈〜してみる〉という微妙なお試し感が、

〈暗鬼館〉に集る若者たちの軽い応募動機とも連動していて、

今の若者の姿を象徴しているという解釈もできるでしょう。



きっちり比較したわけではないのですが、描かれる人物たちの反応・行動は、同じ若者でも『十角館』や『時計館』の時代とは、やはり違っているのではないか、そんな気がしてなりません。

また、〈暗鬼館〉の見取り図を眺めていると、歯車の形に見えてくるのは、私のうがち過ぎでしょうか。

殺人ゲームの歯車から仮に抜け出したとしても、今度は社会という歯車が待っているというのに……



ちょっと深読みをしてしまいましたが、

とにかく面白いです。

まず、こんな体験、普通に生きてればできませんからね。




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