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zoom RSS 女王国の城/有栖川有栖

<<   作成日時 : 2008/11/16 12:01   >>

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わが身の至らなさも『世界がアンフェアだからだ』と自己弁護できる人任せの社会は、責任も人に投げ返す

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有栖川有栖『女王国の城』(東京創元社)です。

『本格ミステリ・ベスト10 2007』(原書房)の第1位の作品。


東京創元社から出ている学生アリス・シリーズの第4作目。


【あらすじ】

英都大学(=同志社大学)推理小説研究会の三回生・有栖川有栖は、同じく推理小説研究会のメンバーの有馬麻里亜(三回生)、望月周平(四回生)、織田光次郎(四回生)と一緒に木曾山中の神倉という街へ向かっていた。
理由は彼らの先輩であり、このシリーズの名探偵である江神二郎が神倉へ行ったきり戻ってこないからだ。
しかも、神倉には「人類協会」という新興宗教の聖地があって、その〈城〉と呼ばれる総本部に江神二郎は入ったまま出て来ないということだった。
「人類協会」は、野坂御影という会祖が宇宙からの来訪者ペリパリと出会って開かれた新興宗教で、ひたすらペリパリの再臨を待ち望み、空飛ぶ円盤を待っている集団である。
現在は野坂公子という21歳の女の子が御影の跡を継いで、代表に就任している。
そして、何とか苦労して「人類協会」の総本部=〈城〉に入り込んだ推理小説研究会のメンバーの目の前で、ついに殺人事件が起こってしまった。
そのことによって、今度は全員、〈城〉から出られなくなってしまった。
メンバーは警察に連絡するために、必死に〈城〉から脱出しようとするが、〈人類協会〉の組織力のために一向に外に出られず、しかも続いて第二、第三の殺人事件まで起こってしまう。
やはり、事件の謎を解くしか、彼らには助かる道はないのか。。。



【感想】

とにかく面白かったです。


よく考えてみると、学生アリス(有栖川有栖という名前で出てくる大学生の登場人物)って、僕の一つ上の学年の設定だったんですね。。。

実際の作家の有栖川有栖さん(作家アリスではない実物)は1959年生まれなので、違うんですけどね。


最初は、なかなか〈城〉に入ることができないので、そのイライラが楽しめます。

〈城〉に入ったら入ったで今度は殺人事件が起こって〈城〉から出られなくなるので、それもまた楽しい。。。

とくに中盤の〈城〉からの脱出劇は、ちょっとソフトなアクション映画じみていて、かなりハラハラさせられます。

それにしても、なぜ警察を呼べないのだろう?
その疑問がずっと引っかかって引っかかって、もどかしさがまたたまりません。

普通、カルト宗教の総本部に閉じ込められて。。。というと、
その信者たちとの過激な対立をイメージしてしまうものですが、
この作品ではそうではないのです。

この〈人類協会〉の人たちは、結構いい人ばっかりの集団で、
それなのに、〈城〉からは出してもらえない。

そのもどかしさが、他の作品とは違う不安感を感じさせてくれるので、
そのあたりも読みどころです。


そして、それらが結末で一本の糸につながってゆきます。

エピローグを読み終わった時に、
「ああ、それがあったか」
と、思わず手を打ってしまいました。


442ページに〈読者への挑戦〉が挿入されていて、
そこから50ページ(原稿用紙130枚)にわたる謎解きのスリルとサスペンスが本当に素晴らしい。。。
そこでの解の導かれ方は、まさにエレガントで、ああ、これが本格ミステリなんだな、と
間違いなく思わされます。

解は、きわめてシンプルなんですが、そこになかなか気づかない自分。
そのもどかしさが、たまりません。。。


メインストーリー以外にも、UFOに関する議論のところなどは、
SF小説としても楽しめる部分がありますし、
カフカの『城』や、筒井康隆の『緑魔の町』、カリンティ・フェレンツェ(ハンガリーの作家)の『エペペ』など、ほかにも様々な作品が紹介されていて、
読書案内としても美味しいことでしょう。



有栖川有栖と有馬麻里亜、有馬麻里亜と江神二郎の関係には、
ちょっと甘酸っぱい青春の香りがします。

神倉の旅館で、夜、お風呂上りのアリスとマリアが二人きりで、
〈淋しさ〉について語り合う場面なんか、
ちょっといいですよ。


個人的には、
有栖川作品における断崖と洞窟のイメージと拉致監禁という問題について
論じてみたい欲望にかられています。

いずれ。。。

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2010/01/17 20:41

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
近所の図書館で見つけたので、読んでみました。
おもしろかったです!
最後に、なるほどそうだったのか〜とうなりました。これぞ、探偵小説の醍醐味。お見事ですね。
白トカゲ
2009/12/20 01:14
白トカゲさん、コメントありがとうございます。
返事が遅くなって、申し訳ありません。
この作品は青春小説のようなところもあって、僕は好きです。
天知小五郎
2010/01/04 04:12

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