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zoom RSS 悪魔が来りて笛を吹く/横溝正史

<<   作成日時 : 2009/05/21 18:14   >>

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半年近く放置してしまいました。

古い作品で申し訳ないのですが、整理のため。

画像



【あらすじ】

昭和二十二年九月二十八日、大森の「松月」に滞在する金田一耕助のところに二十歳前後の若い女性・椿美禰子が訪れた。

彼女は、その年の春に世間をにぎわした天銀堂事件の容疑を受けて失踪し、信州の霧ヶ峰で遺体が発見された元子爵・椿英輔の娘だった。
彼女は父の失踪と死をめぐって金田一に相談に来たのだ。

その内容は、天銀堂事件の犯人のモンタージュ写真と父の容貌が似ているということを家族の中の誰かが警察に密告したのではないかということ、美禰子の母である妖艶な美女・秋子(「秋」の字は本当は「火」偏に「禾」=「火禾」)が夫の死を信用せず、夫の復讐を恐れていること、秋子が英輔の死後、夫の姿を見たことなどであった。

そのため椿英輔が生きているかどうかを主治医の目賀重亮博士が砂占いで占うことになり、その席に金田一も出席してほしいと言う。

また、椿英輔は遺書のようなものも残していた。
そこには、「……父はこれ以上の屈辱、不名誉に耐えていくことは出来ないのだ。由緒ある椿の家名も、これが暴露されると、泥沼のなかへ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く……」と書かれていた。

翌日、六本木にある椿邸の洋間では目賀博士の司会のもとに砂占いが行なわれた。
関係者が一堂に会したその場所で、砂によって描かれたのは、雅楽の火焔太鼓のような模様である。
それを見た元伯爵の玉虫公丸は怒りを露わにした。
その時、邸内のどこかから異様で戦慄的なフルートのメロディがふるえるように聞こえてきた。
椿英輔が生前に作曲した「悪魔が来りて笛を吹く」のメロディである。
そして、翌朝、玉虫公丸が密室の中で他殺死体となって発見された。

その後も次々と起こる連続殺人事件の謎に、金田一耕助が挑戦する物語。

第二次大戦後の混乱や没落する旧華族、帝銀事件などの同時代的な要素を取り込みながら、インモラルな男女関係をめぐる連続殺人事件を描く。


【感想】

昭和26年の作品。

金田一耕助というと、岡山の山奥の村を舞台にした陰惨な殺人事件のイメージが強いですが、この作品は東京や兵庫が舞台で、都会の街を金田一耕助が闊歩するのです。

敗戦により没落する旧華族の一家をめぐる悲劇に、妖しいフルートの音色が彩りを添えます。
とくに作中曲『悪魔が来りて笛を吹く』の秘密(結末でわかる)が個人的には好きです。

また、ヒロインである椿美禰子の母・秋子の妖艶な魅力が印象的でした。

降霊会のような砂占いの場面は神秘主義の香りもしてなかなかよいですし、密室殺人の謎はやはり魅力的です。
このあたりはカーの影響なんでしょう。

そして、何より正体不明の悪魔が、妖しいフルートの音色とともに、ひたひたと近づいてきて、次々と椿家の人々を亡き者にしてゆくあたりが、なんとも不気味でたまりません。

恐ろしくて、美しくて、悲しい連続殺人事件の謎に、名探偵・金田一耕助が挑戦します。


横溝正史の作品では、父性的な権力が引き起こす悲劇というものがよく描かれます。
たとえば、『獄門島』の鬼頭嘉右衛門、『八つ墓村』の田治見要蔵、『犬神家の一族』の犬神佐兵衛など。

しかし、この『悪魔が来りて笛を吹く』では、むしろ〈弱い父〉が描かれているのが、興味深いところ。
そのあたりに、日本の敗戦と天皇システムへの人びと(もちろん横溝も)の認識の変化が表れているのではないか、と考えています。

もう一つよく描かれるのが、男女の性的な関係が事件の謎に影響を及ぼしている、という設定。
もちろん、殺人事件の動機において男女関係というのはむしろベーシックなものなので、性的な関係が描かれていようと、不思議でもなんでもありません。

しかし例えば、江戸川乱歩の探偵小説の犯人がなかばコミュニケーション不全な、恋愛関係の敗残者であることが多いのに比べて、横溝正史の方は、『獄門島』や『八つ墓村』のような暴力的な性や『悪魔が来りて笛を吹く』や『悪魔の手毬唄』のようなインモラルな性関係の被害者であることが多いのです。
そういえば、『本陣殺人事件』だって、旧弊な性意識が事件の引き金となっていました。

そこにも横溝正史という作家の特性があるのだと思います。
そのことをどう捉えるか、というのは難しい問題があるのですが、いずれ論文にしたいかな、とは思っています。
先行研究でそういうのがあったかどうか、未確認ですが。
そこから当時の「時代」が透けて見える部分があるし、その「時代」から横溝という作家が見えてくる部分もあると思うのです。


あと、「横溝作品と芸術(とくに音楽)もしくは芸能」というのも、興味のあるテーマです。
それもいずれ。

思いつきばっかりです。

書くのはいつになることやら。

もう少し頑張って、更新もします。

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