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zoom RSS 水魑の如き沈むもの/三津田信三

<<   作成日時 : 2010/02/06 16:16   >>

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少し前に、三津田信三『水魑(みづち)の如き沈むもの』(原書房、1900円)を読了しました。

1月の末になって、やっと今年の読書(2009年11月以降発売の新刊ミステリを読む意)を始められたような体たらくです。

画像




「圧倒的な面白さ」でした。
小説をこんな風に貪るようにして読んだのは、久しぶりかも知れません。

そして、怖い怖い物語でした。
読み終えてまた、その怖さがひしひしと押し寄せて参ります。

読んでいて思ったのは、とっても映像的な物語だったということです。
活字を目で追っていただけなのに物語の一つ一つの場面が、生き生きと瞼の裏に描き出されたような錯覚を感じます。

とくに沈深湖での水魑様の儀の場面は美しかった。

もし市川崑監督がご存命ならば、是非映像化してほしいところでした。
三津田信三の作品を読んでいると、横溝正史の新刊を読んでいるような気持ちになります。

それでいて横溝作品の亜流では終わらず、独自の三津田ワールドがあり、懐古調でありながら現代性もある。
とっても贅沢なシリーズではないかと思います。

【あらすじ】
怪奇幻想作家の東城雅哉こと刀城言耶は、友人である民俗学者の阿武隈川烏の紹介で、奈良県蛇迂郡の波美地方で伝統的に行われている雨乞いの儀(水魑様の儀)を取材することになった。
奈良の山奥の波美地方には五月夜(さよ)村、物種(ものだね)村、佐保村、青田村と四つの村があり、それぞれの村に神社が一つずつ、四つの神社がある。
水使(みずし)神社、水内(みずち)神社、水庭(すいば)神社、水分(みくまり)神社の四つの神社で水魑様を祀っていた。
水魑様とは、正体は不明だが龍神様のような神様ではないかと言われている。
その水魑様は波美地方にある二重山の山中にある沈深湖に棲んでいるとされる。
波美地方では豪雨や旱天が続くと水魑様に供物をし、雨乞い(=増儀。豪雨の状態の時は減儀)をする。
それが水魑様の儀である。
四つの神社が持ち回りで水魑様の儀を担当するのだが、波美地方で一番の有力神社である水使神社が担当した水魑様の儀で、神男(水魑様の儀を行う神官)がこの地方に古くから伝わる七種の神器の一つで刺殺された。
最有力者である水使神社の宮司・水使龍璽が警察を呼ぶことを嫌うため、刀城言耶が事件の謎を解くことになった。
しかし、そんな刀城をあざ笑うかのように儀式の関係者が次々と殺されてゆく。
刀城と一緒に波美の地に向かった、怪想舎(出版社)の女性編集者・祖父江偲(そふえしの)にまで危険が及ぶが、刀城の推理は迷走する。
二転三転する事件の真相。
そしてついに刀城言耶がたどり着いた真犯人の姿とは?




【感想】
『首無しの如き祟るもの』のようなトリッキーな内容ではありませんが、推理が二転三転するところがなかなか見事。
また、途中で明らかになるある真実は、背筋が凍りつくような恐ろしさです。
さらにそれを食い破ってゆくかのようなパワフルな真相には、ある種の美しさも感じます。


何より波美地方の何ともいえない、ノスタルジックでありながら神秘的な雰囲気の風景が素晴らしい。
行ったこともないのにまざまざと目に浮かぶようです。
登場人物たちも癖があって、魅力的。
とくに水使龍璽の悪魔的な存在感は本当に素晴らしい。

宮木正一の満州からの引き揚げの回想が苦手な人もあるかもしれませんが、私はそこも楽しく読めました。
引き揚げを描いた他の文学作品と並べてみれば、面白いことになるかもしれません。
回想の後半は正一少年の冒険譚のようにもなっているので、ジュブナイルを読んでいる感覚になります。
そこにも懐かしさを覚えました。

それにしても最後の結末をどう考えるかについては、いろいろと可能性があるのではないか、と思います。
もしかしたら、物語全部が消滅してしまうのかもしれない。

作者が「消える物語」として描いた可能性はないのでしょうか。

三津田作品の結末についてもいつか考えてみたいところです。


1200枚(原稿用紙換算)の長編ですが、引き込まれるように読み進めてしまいました。



川島進の表紙絵も相変わらず素敵です。

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