天知探偵事務所ミステリ支局

アクセスカウンタ

zoom RSS 扉守/光原百合

<<   作成日時 : 2010/02/07 01:23   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

非ミステリ作品なのですが、少し前に読んだ本で、光原百合の『扉守』(文藝春秋、1524円)というのがあります。

実はこれ、広島県の尾道という町を舞台にした連作短編小説集です。
ジャンルでいえばファンタジー。

画像




尾道の町は、古くは林芙美子の小説に描かれ、僕の子供時代には大林宣彦の映画で舞台にされ、行ったことのない人間にも馴染みの深い風景となっていることでしょう。

坂の多い町で、今でも和風の古い街並みが残されているのがノスタルジーをかきたてて、尾道の町そのもののファンという人も多いのではないでしょうか。

私自身はやはり原田知世主演の『時をかける少女』(大林宣彦監督)と富田靖子主演の『さびしんぼう』(大林宣彦監督)を見て(もちろん『転校生』も見ました)、尾道の町のファンになりました。

『時をかける少女』を見た翌年に、お願いして尾道と竹原に家族旅行で連れて行ってもらった記憶があります。


さて『扉守』です。

【概要】

その尾道をモデルとした「潮ノ道」という町が舞台となっています。
「おのみち」に「し」をつけただけなのに、ぴったりの名前です。

潮ノ道に住む(或いは訪れる)人たちの中に、不思議な力を持っている人(物)がいて(あって)、その不思議な力で小さな奇跡を起こすのです。

その奇跡が、心の中に迷いや悩み、こだわりを持った人(物)たちを癒して救ってゆく。
そんな物語となっています。


その井戸の水を飲めば潮ノ道を離れても必ず帰って来られるという「帰去来の井戸」。
「場所」が語る物語に耳を傾け、お芝居を作る劇団「天音」。
別の世界から良からぬものが入ってこないよう、世界と異界を結ぶ扉の番人をする喫茶店のマスター。
生きている絵を描く「桜絵師」。
人間の想いを写真に写し出す「写想家」。
どんな材質のものでも編み物にして、人間の想いをも編みこんでしまう「旅の編み人」。
ヘソを曲げたピアノをなだめることが上手い調律師と、
心を閉ざしたピアノに歌うことの楽しさを思い出させたピアニスト。


それらの人や物が、友達との関係に悩む女子高生や、男との不倫に疲れた独身女性、時には傷ついた家やピアノまでを癒してゆくのです。



【感想】

とても優しさに満ちた作品集。
各作品で狂言回しとして、小学生から大人まで、さまざまな年代の〈普通に悩む〉女性たちが出てくるので、とくに女の人には読みやすい作品集になっていることと思います。

〈普通に悩む〉(めちゃくちゃ重い苦悩ではないという意味)女性たちの癒しと回復、救済と成長の物語となっています。

個人的には、「帰去来の井戸」、「桜絵師」、「ピアニシモより小さな祈り」が好きでした。

私はファンタジーがあまり好きではないのですが、その私が楽しんで読めました(少し苦手な表現がなくはなかったけど)。



ミステリの研究をする人間としては、非ミステリ作品での光原百合の、ミステリとの距離感と角度が気になるところです。

これを読んで、もう一度、尾道を訪ねてみるのもいいでしょう。
うまくいけば潮ノ道に迷い込めるかもしれません。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
扉守/光原百合 天知探偵事務所ミステリ支局/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる