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zoom RSS 犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題/法月綸太郎

<<   作成日時 : 2010/02/13 17:03   >>

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以前にメインのブログに書いたものの焼き直し(ほんの少し書き直しました)ですが、整理の都合上、こちらにアップしておきます。


『犯罪ホロスコープT 六人の女王の問題』(光文社、838円)
2008年1月25日刊。

作者と同名の探偵・法月綸太郎の活躍を描く本格ミステリの短編集。
黄道十二宮の星座のうち半分、牡牛座から乙女座とそれらにまつわるギリシャ神話を題材にした作品集。


画像





【概要】

「ギリシャ羊の秘密・牡羊座」
アリョーシャというニックネームを持つ名無しの権兵衛のホームレスが河川敷で殺された事件。被害者の着ていたゴールデン・フリースのジャケットはなぜ持ち去られたのか? (『ジャーロ』2007年冬号)

「六人の女王の問題・牡牛座」
元劇団員で売れっ子ライターの虻原サトルが劇団の主宰者・赤星剛志郎の住むマンションの敷地内で転落死体として発見された。被害者の残した俳句の中にはどのようなメッセージが込められていたのか? (『ジャーロ』2007年冬号)

「ゼウスの息子たち・双子座」
綸太郎が小説執筆のために缶詰にされた山中湖畔の「四つ葉ホテル」で、自称ルポライターの恐喝屋が殺された。被害者が最後に口走った「偽者にやられた……」の意味は? (『ミステリーズ!』2004年6、8月号)

「ヒュドラ第十の首・蟹座」
巣鴨の染井霊園で一人の男が殺された。被害者の自宅も荒らされたのだが、その際に犯人が右と左を合わせて五枚の軍手(右2枚、左3枚)を使用した。なぜ、犯人は、五枚の軍手を使用したのか? (『気分は名探偵』2006年5月31日)

「鏡の中のライオン・獅子座」
〈女王様〉の呼び名を持つトップ女優の仙道美也子が自宅のマンションの駐車場で死体となって発見された。死体の耳には不似合いなバタフライピアスが片方にしかなかった。そして、女優と噂のある、年下の新進脚本家・滝本吉樹の自宅で、ピアスの片方が見つかったが……。(『ジャーロ』2007年春・夏号)

「冥府に囚われた娘・乙女座」
〈水中毒で昏睡状態に陥った女子大生から友人のもとに「毎日、鉢植えの植物に水を遣りにきてほしい」というメールが届いた。友人が行ってみると、「鉢植えの植物」というのは植物状態となった彼女自身のことだった〉という都市伝説の元ネタとなった実際の事件(もちろん作者の創作)の謎。しかも、現実の事件の方では、メールを送られた男性が熱中症で死体となって発見された……。(『ジャーロ』2007年秋号)



【オススメ】

ずっと十年近く悩んでいた作者の、悩み無き(?)作品集。

作者自身の言葉にも〈気楽に読んで愉しめる、そして後にはいっさい何も残さない、そんな娯楽奉仕に徹したミステリー集〉とあります。

ある意味言葉通り、雑誌(もしくは夕刊誌)発表の際には犯人当ての形式をとっていた作品(「ゼウスの息子たち」、「ヒュドラ第十の首」)もあるぐらいで、本格ミステリとしては読みやすく、まさに謎解きを〈愉しめる〉一冊だと思います。

「ゼウスの息子たち」を高校の授業で犯人当てとして、プリントして読ませたことがあります。
使ったのは、創元推理文庫のアンソロジー『あなたが名探偵』に収録された方の本文でした。
分量的にも内容的にも1コマの授業の中で使いやすかったからですが。

とくに個人的には「ゼウスの息子たち」が気に入っています。
作者自身は〈犯人当てとしては初歩的なレベル〉としていますが、たぶん多くの人に喜んでいただけるのではないでしょうか。
僕たちの「思い込み」をうまく利用してくれています。

「ギリシャ羊」もなるほどと思いましたし、「六人の女王」では勉強になりました。
「冥府に囚われた娘」の都市伝説は作者の創作のようですが、それ自体がなかなかうまくできていると感心します。


これまでの作品の、悩める探偵・法月綸太郎が好きだった私としてはちょっと物足りない部分もなくはないのですが、さすが本格ミステリの第一線で活躍し、本格ミステリを熟知している作者による作品集なので、やはり純粋に楽しめる一冊となっています。


ただ、『本格ミステリ・ベスト10』のレビューでも書いたように、作者の言葉を鵜呑みにしてはいけないなとも思うのです。
例えば、「ギリシャ羊」でホームレスが殺されたというのは、東野圭吾の『容疑者Xの献身』とそれに対する笠井潔の批判を意識してのことだと思うし、「六人の女王」の暗号の問題でも『容疑者X』で言及されたNP問題が出てきており、作者が本格ミステリの抱える問題を数学の問題として捉えていることの表れだといえるでしょう。

また、登場人物の名前をめぐる謎、トリック、ロジックが頻繁に用いられるところなどは、柄谷行人の影響だといっても間違ってはいないと思われます。

さらに、全体がギリシャ神話に見立てられているところは、作品の中で犯人が意図的に行う見立てとは違い(ご都合主義に陥る一歩手前ではあるかもしれませんが)、物語の展開が自然とギリシャ神話(など)に引き寄せられてゆくという不思議(?)を描いているところに、現在の作者の立っている地平が象徴されているようで、興味深いのです。

作者の新しい一歩なのかもしれません。
一見、純粋に謎解きミステリを書いたような身振りは見せていますが、作品にそういった批評性を織り込んでゆく姿勢は健在なのではないかと思います。


後半の天秤座から魚座の短編集も楽しみです。
へびつかい座はどうするのでしょう。


書誌情報(初出)は、未確認です。

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